Potion 〜魔法薬〜 その1 隆夜との学校帰り。

「あー、疲れた。」

「あの授業だけはどうにもな?」

落ち葉が舞い散る歩道を自転車で行く。

学校帰りの景色は、秋の様相を呈していた。

「まぁ、週2時限しかないのが救いだな。」

「ああ。・・・それじゃ、道こっちだから。」

「あいよ。お疲れ〜。」

ふぅ。

それにしてもやっと一日が終わる。

明日は1時限しかないから良かったものの、

今日だけでどれほど疲れるのやら。


広い庭を通り、正面玄関を通る。

「あ、ユカナ様。おかえりなさいませ。」

「ああ、ただいま。」

「ただいま夕食を作っていますので。

 え〜と、何かお飲み物でも持って行きますか?」

「うん。頼むよ。」

「わかりました。」

ロビー正面の階段を上ったら右折。

そのまま真っ直ぐ行き、突き当りを左に曲がると階段。

3階に着いたら通路をそのまま進んで行き、

真ん中辺りで止まる。

そして左向け左。

そこが館主の部屋である

オレにとってはちょっとばかし広すぎるが。

まぁ、慣れだな。

いつもの場所に鞄を放り、ソファーに座る。

しばらくぼーっとしていると、睡蓮が紅茶を持ってきた。

後は、夕食が出来るまで本読んだりゲームしたり。

夕食後にすることといえば、風呂と宿題があればそれだけだ。

何事も無く木曜日は終わった。


翌日の金曜日。

1時限しか無い上に、明日と明後日は休みだ。

ややテンション高めで登校。

すっかり緩みきった感じで下校。

適当に睡蓮と雑談をしている。

「あー、そういやちょっと出かけようと思うんだけど。」

「あら、そうなのですか。どちらへ?」

「本屋だよ本屋。」

すると睡蓮は考える風に少しだけ黙ると。

「なら私も一緒に行ってもいいですか?」

「ん、いいよ。」

「それでは準備を・・・。」

と言いかけたところで客が来たようだ。

来客が鳴らす呼び鈴の音が響く。

「えーと、お客様の用事が済んだら準備しますので部屋で待っててください。」

「おーけい。」

ちょっと急ぎ足で睡蓮が部屋を出て行く。

オレは特にこれといった準備は無いのでソファーに座る。

窓の外でも眺めて待つことにした。

・・・。

・・・・・・。

しばらくすると睡蓮が戻ってきた。

服を引きずりながら。

「・・・。どうしたの?それ。」

「びようの薬と言われて飲んで見たら

 こうなっちゃったのよ。」

そう。

衣服を引きずりながら戻ってきた睡蓮。

彼女は明らかに背が縮んでいた。

それでけでなく、声までもが幼く聞える。

どうやら精神年齢はそのままに、体が若返りすぎたようだ。

外出どころじゃないな、こりゃ。

睡蓮曰く。

先ほどの客が美容の薬を売り歩いていたそうだ。

試しに買って今日外出する際に使ってみようと思ったそうだ。

そして、今に至る。

「えーと。それでですね・・・。」

ちょっといい難そうに睡蓮。

「私はこんなんだし。かわりにもとにもどす薬を

 買って来てほしいのよ。」

確かに、今の睡蓮では戦う事は出来ないだろう。

そうなったらオレ一人で行く訳しか無いのだが・・・。


詳しく聞いてみると、確かに肌はスベスベになり

効果はあったそうだ。

が、効果の出があまりに早すぎる。

その上、肌だけではなく体の年齢まで戻ってしまったようだ。

このような事が出来るのは魔法使いくらいだろう。

しかし、これから探すのは困難ではないのか。

屋根裏へ続く階段の途中に横道があり、その先は

草原だったり花畑だったり精神を映す世界だったり。

この世にはよくわからん世界が無数にある。

その魔法使いもそのような世界を知っているだろう。

いったい何処をどう探せばいいのやら。

睡蓮はこの屋敷にある図書館で今回の事態について調べている。

オレはとりあえず外をぶらぶらしてみる事にした。

一応氷のナイフも持っていく。


・・・

・・・・・・


数時間が経ち、昼食時になった。

少しずつ行きかう人々が増える駅前広場のベンチで

ユカナはため息をついた。

全く見つからないのである。

途方に暮れていると言っても良いだろう。

「あー、どうすっかなー。」

自分と同じような境遇の者。

隆夜の所にでも入ってみようかなー。

そう思いトボトボ、という擬音が合いそうな足取りで噴水へと向う。


噴水へ到着。

一度伸びをしてから周囲を見渡す。

隆夜の姿は無い。

噴水の裏に回ってみると、いた。

が、隆夜では無かった。

黒いローブに身をつつんだ女の子だった。

様々な色の液体の入った小さな瓶と数冊の本が置いてある。

160cmはあろうかという長い杖と魔法使いっぽい帽子も傍らに置いてある。

どうやら彼女が睡蓮に売った美容の薬を作ったらしい。

芝生の上を歩いて行くとオレに気がついたようで

手に持っていた瓶を置くと立ち上がってこちらを向いた。

「お客様ですか?」

「まぁ、そう言えるかも知れないしそうではないかも知れないな。」

「?」

よく判らないといった感じで小首をかしげる。

「えーとだな。いくつか聞きたいことがあるんだ。」

「なんですか?」

「君の作った美容の薬を最後に売ったのは何処なんだ?」

「えーと、楼憐館・・・という所にいたメイドです。」

間違いないと心の中で相槌をうつ。

「でだ、その美容の薬は肌年齢だけではなく体自体の年齢まで戻す効果があるのか?」

「その効果は無いです。」

「でもウチのメイドが子供になっちまったぞ?」

「あ、え、そんなはずは・・・。」

急におろおろとしだした。

本人にはゆゆしき自体なんだろうが、見ているこっちはなんだか微笑ましい。

しばらく本や薬を鞄から引っ張り出しては脇に置いてを繰り返し、

そして。

「す、すみませんです〜〜〜〜!!

 調合のミスがありまして・・・えと、それで、その元に戻る薬を〜〜。」

すごい焦りっぷりだ。

「とりあえず落ち着いて。

 間違いは誰にでもあるんだから。」

と、なだめる。

その後は、後退してしまった年齢を元に戻す薬を作ったら

楼憐館に来るよう約束をした。

それにしても彼女は最後までうろたえていた。

あんなに焦ってたらまた失敗しそうだよな。

ちょっと心配。

ま、今は待つしかないか。

そう思うことにして草原をのんびり歩き、楼憐館へと戻ることにした。



〜Fin〜