Potion 〜魔法薬〜 その3
「ヴィオレ!!」
「魔導回路20%で起動。
焦熱よ。燃やし尽くせ。バーンレイド!!」
前方にいる数人の魔術師を吹き飛ばす。
すかさず走る。
「逃がすか!」
「青き蒼き虚空より出でし氷精よ。彼の者を封じよ。ブリザードケージ!!」
逃がすまいと魔術を放ってくる。
だが氷系の力なら俺でもある程度は操れる。
手のナイフに念ずる。
辺りを氷漬けにしつつある敵の魔術の一部に隙間が出来た。
「こっちだ!」
「うん!」
ヴィオレの手を引いて氷の監獄から抜け出す。
人気のない山道を下る。
そして、異界のとある町に着いた。
流石に街の中では魔術をぶっ放してくる事は無いだろう。
ちらりと後ろを振り返ってみると、人の気配は無い。
どうやら一旦諦めたらしい。
日はほとんど落ちかけている。
今日はここの宿に泊まることになりそうだ。
シャワーを浴びて、夕食をとり時間は10時。
備え付けの寝巻きに着替えてベッドに座る。
これまた備え付けの冷蔵庫(の様なもの)から水を取り出して数口飲んで一息ついた。
楼憐館を出てから今日で3日目だ。
ヴィオレが言うには・・・
「この町はメーゼ大陸の南の方に位置する町です。
私の家は北の方にあるですが、楼憐館と私の家の中間にあるのが
メーゼ大陸一の人口と規模を誇る大都市エクスヤード。
その都市にたどり着いてないってことはまだ半分も進んでないって事ですね。」
だそうだ。
ちなみにこの異界は位相のちょっとずれた位置にある魔導文明の栄えた世界だ。
楼憐館から行けるあの噴水の場所とはまた違った変な世界らしい。
そしてさっき襲ってきた連中はヴィオレとは異なる魔術を使う別勢力。
魔術にも流派のようなものがあって、その抗争みたいなものだったとか。
とかなんとか考えているうちに眠くなってきた。
休めるうちに休んでおかないとヴィオレの家までたどり着けないかもしれない。
それは冗談では済ませられないので寝ることにする。
ではおやすみ〜・・・。
翌日の早朝。
朝もやがかかる街道を歩いている。
今の所は敵が出る気配は無い。
順調に進んでいく。
途中、旅の行商人に遭遇。
時刻は昼を少し過ぎたところ。
なので、その行商人から水と食べ物を少々買った。
ついでに次の町までどれくらいかを訊いてみたところ・・・
「そうだなー。あと1時間位って所かな。
まぁ、お前さんたちは軽装だし、もっと早く着くかもな。」
だそうだ。
その後は40分程で次の町に到着。
小高い丘の上にあるのでちょいと遠くが見渡せる。
すると、少し霞んで遠くに建物がやたらたくさんある所を発見。
「あ。あれがエクスヤードですよ。
もう少しです。」
「半分まで・・・な。」
「・・・・・・。」
前の町同様に体を休める事に重点を置いて過ごす。
当然ながら早めの就寝。
翌日。
霧雨の降る中を出発。
そして、夕方にエクスヤード近隣の比較的大きな町に到着・・・。
「ここは通さない。」
したと思ったのに邪魔が入った。
俺はナイフを鞘から抜き、ヴィオレも杖を構えて攻撃に備える。
「ふっ!」
鋭い呼気と共に視界から掻き消える。
「早い・・・。」
とりあえず全方位シールドを展開。
キィィン・・・。
敵の初撃は防げたようだ。
にしても、今回の敵は魔法使いじゃないらしい。
シールドを解除すると元いた場所に敵は立っていた。
「私ではその盾を斬る事は出来ないか・・・。
でも、時間稼ぎくらいにはなったか。」
時間稼ぎ?
ようやく視認できた敵の武器は短剣なようだ。
その短剣を構える。
そして、次の瞬間。
「ユカナさん!!!」
耳をつんざく様な爆音。炎。黒煙。
そして静寂。
「・・・うはぁー。危なかった・・・・・・。」
「びっくりしたです。」
なんとかシールドを展開して防げた。
が、状況はあまり良くないようだ。
ざっと見渡して魔術師が6人。
短剣使いが最初に戦ったのを含めて4人。
計10人か・・・。
圧倒的に不利だ。
「ゆ、ユカナさん・・・。」
「どうした?」
ちょっと申し訳なさそうにヴィオレが話す。
「実はこの町は私の所属している魔術ギルドとは違うギルドのある町です。
なのでー、そのー・・・。」
入るのを邪魔されたって訳か。
「はいです。
だから今日は野宿するしかー・・・。」
「お前達は下がっていろ。」
視線をヴィオレから声のした方に向けると、白を基調とした鎧を着た男が一人
こちらに向かってきた。
「彼らは私の客人だ。
魔術ギルドの命令でこの町に来た訳ではない。」
静かに、それでいて少し威圧的に。
彼の言葉を聞き、10人の敵対ギルドのメンバーは町へと入っていった。
しばらく彼らの動きを目で追っていた白い鎧の騎士はこちらを向いた。
「そっちの男性の方。
あなたはこの世界の者では無いな?」
「なんでそう思うんだ?」
「目を見ればわかる。
君の瞳は私を・・・いや、私の鎧を少し好奇の目で見たように思えたのでね。
君の世界ではこのような鎧は珍しいのだろう。」
「・・・・・・。」
恐らく強い。
勝てない。
「私の名はグライアス・レヴェリオン。
エクスヤードで犯罪者等を捕まえたり、都市を外的から守る騎士団の部隊長を務めている。
今は用事があってこの町に来ていたのだが、明日には発つ予定だ。」
敵意は感じないし、そもそも俺たちに攻撃する気があるのなら自分の正体とかを
ペラペラ話したりはしないだろうし。
手のナイフを鞘に戻す。
「どうやら敵でないことを分かって貰えたようだな。
とりあえず場所を移動しよう。
立ち話もなんだし、もしよければ私の滞在している宿屋まで招待するが?」
「どうする?」
「レヴェリオンってけっこう知れた名前なんですよ。」
「そうなのか?」
「はいです。
なので着いて行っても大丈夫だと思うです。」
決まりだな。
「じゃあお願いします。」
「わかった。こっちだ。」
そう言うとマントを翻し歩き出した。
一時はどうなるかと思ったけれど。
どうにかなったようだ。
でも、まだ全工程の半分も行ってないんだよな。
先は長そうだ・・・。
こんなに時間かかるとは思わなかったよ。
今は休もう。
後半のために。
〜Fin〜