Since of cruel cross Vol.4

Licht


そろそろ行きましょう。

ひかるを助けるために。

自室を出て通路を歩き、玄関から公園へ向かう。

心臓がいつもよりも早く脈を打つ。

そして公園に着いた。

「来たな。」

銀色の髪から覗く紫の瞳が私を射抜く。

「ひかるはどこですか。」

静かに問いかける。

戦う前から圧倒されていては勝機は微塵もなくなる。

相手は私のほうを一瞥してから答えた。

「心配するな。傷は付けていない。」

そう言って指をぱちんとはじくと、彼女の目の前に魔方陣が

描かれて、続いて中央にひかるが現れた。

「ひかるーー!」

彼は立ち上がると私のほうへと小走りで駆け寄ってきた。

「大丈夫。なんか異空間とかいうところに閉じ込められていただけ。」

それを聞いてほっとした。

だけど安心するのはまだ早い。

ラファールとの戦いがまだ残っている。

「さてと。それではやるか。だが場所が悪い。」

何か魔法を唱えると、あたりの景色が歪み別の景色へと変化した。

「ここは・・・。」

天界だった。

だけれど天界は私が壊したはず。

「ここは天界に似せて作られた世界だ。まぁ、天界と言ってしまっても

 いいけどな。ここなら思う存分魔法を使える。だからここで戦おう。

 異存はないな?」

「え・・・ええ。」

だけどまさか第2の天界が作られていたなんて。

色々考えていたけど、頭からそれらを追い出す。

「今はこの戦いに集中しないと!」

そう心の中で自分を叱り、戦闘体制へと入る。

「では、いくぞ!」

ラファールが動いた。

背中から黒い翼を出した。

手には刀身が真っ黒な剣を握っている。

私は溜めていた魔法「ホーリーアロー」を3本前方へ打つ。

体を捻って2本を避け、残り一本は剣で受け止めた。

そのまま勢いに乗り私の1m手前まで一気に跳躍。

私も後ろへと引くが相手の方が速い。

黒い残像を残す敵の一閃。

だが、それは前方に張ったシールドで弾かれる。

その隙を狙って5本もの矢を放つが相手は空中で霧散し、光の矢は

何も無い空間を虚しく横切り遥か彼方へと消えさった。

「なっ・・・。」

なんでと言おうとしたが言えなかった。

肩に激しい痛みを感じ、見るといつの間にか斬られていた。

「くっ・・・。」

ラファールは最初にいた位置に立っていた。

「まさか、私の一撃があの程度のシールドに弾かれると?」

そうだったんですか。

突進してきたのはわずかな攻撃力しかない幻影。

それに気を取られた私は後ろに気を全く配らなかった。

結果がこれだ。

「今は手を抜いたが、次はないぞ。」

魔力も戦闘技術も今は敵のほうが上。

だけど負けない。負けるわけにはいかない!!

背中から真っ白な翼を出し、大空へと飛び立つ。

そして、上昇する最中に呪文を紡ぐ。

私を追うように敵も昇ってくる。

私は、この一撃に賭けます。

素早さの面では彼女に劣る私は、ちまちました攻撃では

勝てる確率は0に近い。

だから、現段階で一番威力の高い魔法を全ての魔力を込めて放つ。

これしか方法は無い。

「これで終わりにして見せます!!ラインヴァイス・シュ・・・。」

「待て、防御しろ!!!」

「!!?」

思わず全方位シールドを展開。

次の瞬間、あたり一面を数百・数千にも上る光の矢が貫いた。

シールドに次々と矢が当る。

下を見るとラファールもシールドを張り、何者からの攻撃に耐えていた。

シールドは張り続けるだけでも少しずつ魔力を消耗するが、

敵の攻撃が当たっている時の方が当然消費は多い。

威力はそんなに高くない光の矢と言えどもこの量では・・・。

前を見るとまだまだ矢は飛んでくるようだ。

「もう魔力が・・・。」

無数に飛んできた矢の一本がとうとう私のシールドを粉々に砕いた。

もうだめだと、私は心の中で呟いた。

「あっ・・・くっっ!」

「え!!?」

思わず目を見開いた。

さっきまで敵だったラファールが私の目の前にいた。

「無事か?」

「は、はい。でもあなたは・・・。」

「気にするな。それよりもここを離脱する。」

周囲を魔法の文字が囲い、地上界へとワープした。

まだ私は混乱していた。

敵であるラファールが何故?

着いた所は杉奈荘から歩いて20分くらいの所にある公園だった。

前を見るとぼろぼろになったラファールがひざを着いてしゃがんでいた。

腕にはいくつもの血の筋が流れ、手のまわりに赤い小さな池を作っている。

頬も切れていて血が出ている。

衣服が黒いので判らないが、体にも何本か矢が当っているかもしれない。

私は呪文を紡いだ。

魔力なんてほとんど無きに等しいけれど、やらないよりはマシのはず。

「万人を見守りし聖母よ。その慈愛を分け与えよ。ヒールウィンド!」

少しでも傷かふさがれば・・・。、いや、止血程度でもいい。

「なんのつもりだ。私はお前を・・・。」

「今はそんな事を言っている場合じゃないでしょう!

 ここで待っててください。」

私の魔力では治療しきれないので慌てて杉奈荘へと戻り、

救急箱を取って戻ってくる。

清潔な布で血を拭いてから消毒する。

それから包帯を巻く。

そして・・・。


「朝ごはんできたよーー!」

「はい!わかりましたーー!」

布団からもぞもぞと出てきて着替える。

ふと後ろを見る。

彼女は起きていないようだ。

「朝食のじかんですよー。」

そう呼びかけると、やや間があってからもぞもぞ動き

「ん、そうか。」

それだけ言うと布団から出て着替え始めた。

着替えが終わったら顔を洗い食堂へ向かう。

「いただきます。」

4人で朝食をとる。

その後はそれぞれ自由時間になる。

とりあえず私は自室へ戻り、窓から見た景色をスケッチブックに

描いていく。

「ほう。なかなか上手いじゃないか。」

紫色の瞳が手元を除く。

「そんなことないよ。村上さんの方がずっと上手ですよ。」

「いや、だけどマリアもなかなかのものだと思うが。」

「そう?」

「うむ。」


結局ラファールは杉奈荘の一員になったのだった。

あの光の矢は、私とラファール両方とも狙っていたようで、

ラファールの魔力を恐れた上の方々が放ったものらしい。

あれから数日。

すっかりラファールさんもここ、杉奈荘に慣れました。

ただ、外ではどうかわからないけど。

兎に角、平和というものを改めて実感しました。

何も無い一日。

だけど、それこそが貴重なのだと。

あ、そうそう。

ここだけの話。

ラファールさんを杉奈荘に引き止めたのは村上さんなのです。

何か色々と彼女に話しかけて。

とてもじゃないけど私では無理でした。

やっぱり村上さんはすごいなぁと、尊敬しています。

これからどんな事が起こるか分からないけど、次からは

ラファールさんがいます。

2人で力をあわせたら、なんとかなるはずです!