Since of cruel cross Vol.3
She decision〜
荘厳な雰囲気の建物。
その中で一番大きい部屋で会議が開かれていた。
「これより会議を始める。」
一息間を挟んでから女性が立ち上がって話しはじめる。
「では、私から話させてもらう。
つい先日行われた魔源の泉を復活させた儀式より
天界・地上界共に魔力濃度が上昇した。それにより
あの『マリア・リュミエール』が魔法を使ったのを
確認した。」
集まっていた者たちはどよめいた。
「本当にいいのか。あのマリアだぞ?
あいつが魔法を使えるようになれば・・・。」
言葉をさえぎるように、女性は言う。
「だが、まだ完全とはいえない。
魔力が元に戻る前に攻撃すればすぐに片付くだろう。」
皆は黙り込む。
その中で一番年老いた者が口を開いた。
「そうか・・・。ならばラファール・クロイツァー。
お前に任せよう。」
「承知いたしました。では、準備のためにこれで・・・。」
銀色の髪と黒い服を翻し、ラファールと呼ばれた女性は
部屋を立ち去った。
「ふあ〜〜ぁ。眠い・・・。」
昨日の夜は本を読んでいた。
そして気づいたら5時だった。
もちろん、午前の方の5時であって夕方ではない。
一応寝たけれど、10時ごろに自然と目が覚めてしまい
5時間しか寝ていない。
それにしても昨日は驚いた。
なにせ、魔法が使えたのだから。
それよりも、魔法以外で私にも出来る事。
できれば、それが得意になれるような事。
それを探さなければいけないのだけれど、それがなかなか
見つけられない。
ひかるはゆっくりでいいって言っているけど、
やっぱりそういう訳にはいかないと思う。
ずっと部屋にいるのもあれだし、ちょっと散歩にでも
行こうと思いつき、杉奈荘をでた。
「お、君もお出かけか?」
振り向くと村上さんだった。
着物のような服に眼鏡。
少しだけ白髪交じりのボサボサ頭。
作家ってみんなこういう風になっちゃうのかな?
いやいや、それは私の単なる偏見だ。
見た目だけで判断してはいけない。
現に昨日元気付けられたしね。
「いえ、お出かけって言うよりもただの散歩です。」
「そうか。暇なら一緒に来るか?」
「はい!」
そういうと歩き出した。
どこに行くのか尋ねてみたところ、画材屋さんに行くとか。
画材屋っていうのは、絵の具とか色鉛筆とか
それらを書くための紙とか、そういった絵を描くのに必要な
道具がたくさん売っている所らしいです。
「着いたぞ。」
店の中に入ると、それは色々なものが置いてある。
村上さんはどこに何があるのかを把握しているようで
ぱぱっと必要なものだけを揃えてしまった。
「何か欲しいものでもあるか?」
「いえ、特にないです。私は絵が苦手だから・・・。」
「それじゃあ、あのスケッチブックと色鉛筆を買ってあげよう。」
ちょっとためらった。
絵が苦手って言ったはずなのに買ってくれるってどういうこと?
「私が描き方を教えてあげよう。本業は作家だけど
絵もそこそこ描けるからね。といっても風景画しか描けないけどな。」
「それだけでも十分です。是非教えてください。」
画材屋からの帰り道。
色々と考えてみる。
絵のこととか、これからの自分のあり方についてとか。
だけど本当にいいのかな。
まだこの世界に来て日にちは浅いけど、少しずつ馴染んできている。
そう感じられるようになってきた。
私は天使だけれどそれって良いことなのかな?
「なに難しい顔しているんだ?」
「えっ?」
どうやら顔に出てしまったようだ。
「私でよかったら相談に乗ろう。」
「それじゃあ。」
村上さんなら話してもいいかな、と思う。
さすがに私は天使です、とは言えないけれど。
「この世界の者でないのに、馴染んでしまってもいいのでしょうか。」
回りくどい言い回しをしてもあまり意味がないから、
単刀直入に言った。
「そうだな〜。いいんじゃないのか。
別の世界から来たとしても、この世界に少しでも慣れようと努力
しているんだろ?だったら、それはもう立派なこっちの者だ。
これからも慣れる努力をすればいい。
さっきも言ったが何か困った事があればいつでも相談に来い。
出来る範囲でだがな。」
「ええ、わかりました。ありがとうございます。」
「じゃあな。」
そういうと自室へと戻っていった。
杉奈荘の前でこれからも慣れる努力をしようと決意し、自室へ戻る。
「ひかる。私決めました!」
朝の食卓にて、私はひかるにも伝える事にした。
「まだこっちの世界に慣れてないけど努力する。
もしかしたらまた迷惑かけちゃうかもしれないけど
いつか絶対に償うから。」
ひかるはポカンとした顔でこっちを見ていたけど、少し思案した後、
こう言った。
「ああ、僕も協力するよ。それに、少なからず他の人に迷惑を
かけながら成長するものだと思っているしね。
だから頑張って。でも、償いはいいよ。」
「そうですか?」
「うん。」
「それじゃあ、僕は大学に行ってくる。」
「言ってらっしゃい。」
いつの間に食べたんだろう。
ひかるって食べるの早いな〜と少し感心(?)しつつ、黙々と
食べていく。
その後は食器を洗うのを手伝い、それが終わったら絵を描こうと思う。
食器を洗い終わり、色鉛筆とスケッチブックを手に公園へ向かう。
まずはざっと下書きを書く。
次に本格的に立体とかそういうのを書いていく。
絵のバランスも気にかけないとすごい事に・・・。
「絵か。ずいぶん呑気なものだな。」
鋭い刃のような声にばっと声の主の方を向く。
「あなたは・・・ラファール!!?」
公園の一番暗いところから現れた。
長い銀色の髪に紫色の瞳。
黒く裾の長い服は風になびいている。
「そうだ。私の名はラファール・クロイツァー。」
彼女は闇属性の魔法を使える唯一の天使。
魔界との戦争の際の切り札だ。
魔力も凄まじく、「黒い十字架」という異名を持つほどだ。
「お前を消すために来た。だが場所が悪いな。
1時間後にまたここへ来い。わかったな。」
そう言うと振り向き、現れた場所へと戻っていく。
ふと足を止めてこういった。
「・・・サボろうなんて考えるなよ。和泉ひかるの命が惜しくなければな。」
「なっ・・・!」
再び歩き出し、闇に溶けるように消えた。
「そんな・・・ひかるが・・・。」
ショックだった。
まさかこんなことになるなんて。
だけど、いつまでもぐずぐずしていられない。
急いで杉奈荘へと戻り、少しでも魔力を高めることにした。
ラファールとの戦闘まであと1時間。
あのラファールに勝てるかは判りませんが、頑張るしかありませんね。
まだ、魔力が戻ってから数日。
全体の50%くらいしか魔力は戻ってませんがひかるのために、
絶対に勝って見せます!!